本日は内科診療です。食物依存性運動誘発性アナフィラキシーに関して紹介します。
普段はラーメンを食べてもアレルギーにならないのに、運動したらアレルギーになったという症例です。
20代男性.週2回トレーニングセンターでランニング等を始め、ある日ラーメンを食べた.
3時間後運動したところ手先から全身に皮疹が出現し,ふらつきも認めたため救急要請した.
しかし救急搬送中にふらつきが改善したため救急外来受診せず帰宅した.
翌日内科外来受診した.
小麦等のアレルギー精査のためIgE単一試験・複数結果用多種抗原キット(viewアレルギー39検査)を行った
しかしアレルギーの原因となる食物は特定できなかった.
食物依存性運動誘発性アナフィラキシーを疑い皮膚科にコンサルトを行った.
ωグリアジン5高値であり小麦による食物依存性運動誘発性アナフィラキシーと考えられた.
小麦は多くの食品に含まれるため避けきることは難しいため食後数時間は運動を避けるよう指導した.
また過去に運動後に呼吸困難症状を伴い皮疹が出現したことがあるようだったのでアドレナリン注射液も処方した.
その後外来で観察したが明らかなアレルギー症状なく経過した.
今回の場合は病院受診に至りましたが、中学生の時から症状が出現していたようです。
問診を進めると息苦しさを感じたときもあったとのことでしたが、10年程症状があっても生命の危険性があるとは思わず,病院受診には至らなかったようです。
今回の症例ではviewアレルギー39検査や小麦の特異的IgEでは診断に結びつきませんでし。
食物を構成している多種類の蛋白質のうち,アレルゲン性がある蛋白質分子をアレルゲンコンポーネントといいます。
アレルゲンコンポーネントは国際分類に基づいて命名され,小麦に関してはω-5グリアジンがコンポーネントになります。
小麦は日本人の食生活において,毎日摂取される一般的な食材になっており,食物依存性運動誘発性アナフィラキシーが診断できることは患者生活の安全性に直結すると考えております。
現段階での発症予防方法はないため,ω5グリアジン低アレルゲン化小麦の開発への応用も期待されています。
日本でもアレルゲンコンポーネント特異的IgEの測定が一部保険適用されています。
食物依存性運動誘発性アナフィラキシーという疾患を世間に広く周知させる必要があると感じました。
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